臓器移植と尊厳という重いテーマなのに、どこまでもピュアだ。
第22回 横溝正史ミステリ大賞の大賞受賞作ということで巻末には選評が掲載されている。
この選評を読むのも大好きだ。
選考員のうちのお一人が「今の世、セックスを脳裏に浮かべないティーンエージャーがいるとしたら、お目にかかりたいものだ」とおっしゃっておられます。
小説冒頭に挿入されているように、オスカー・ワイルドの「幸福の王子」を下敷きにしているのならティーンエージャーであろうとなかろうと「あり」だと思う。
ピュアな心を前提にした、ミステリというよりもファンタジーなのだ。
心臓をもらうことを拒否した恩師の物語は現実味があったようにも思う。
しかし、昴の高校受験のエピソードはちょっと問題あり。
よかれと思ったのでしょうがベテラン教師はそこまで考えをめぐらせるべきだったなあ、と(ここ、「OZ」でマクマナスがミゲルに仮釈放審査を無理強いして絶望に突き落とした話を思い出してしまった。どこまでミゲル好きなんだか…)。
選評によると、受賞の前年も初野さんは「しびとのうた」という作品で最終選考に残ったらしい。
読みたいが、「改稿して出す予定だったが没にした」とその後のインタビューで答えるのを読んで少しがっかり。
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