人に話したら同情と好奇の入り混じった目で見られるような病気を経験したせいか闘病記は苦手だし、
「世界屠畜紀行」での、最初から家族として迎える愛玩動物と、食べてもらうために育てる生き物への愛情は別だという自分の考えとは微妙なズレを感じていたので(「ウチザワは大丈夫」という言葉に代表される)、手に取りにくかったのですよ(「世界屠畜紀行」は、とても引き込まれるルポなので一読をおすすめします)。
ただこの本、表紙があまりにもあっけらかんとしているじゃないですか。
俗に言う闘病記とは違った何かがあるはず、と読むことに。
著者は38歳にして乳癌となり、両乳房全摘、再建手術も経験しております。
ただその流れが今までの不調な病歴のひとつにすぎないというか、
うっかりすると癌であるということを見逃してしまうような語り口。
もちろん、それは語り口だけで書かれていることは
医師との関係、金銭問題、ホルモン治療による耐え難い副作用、亡くなった癌友、とかなりヘビーなのですけれどもね。
紆余曲折を経験し、不調をなんとかしたいと始めたヨガに身体をよい方向に変えられた、というところに行き着く。
が、ヨガが自分に合っているから続けたいと思えば思うほどにそのヨガとの葛藤が芽生えてくるところなど内澤さんだな、と強く感じられる。
実際、そこまで考えてヨガやってる人はかなり少ないと思うもの。
タイトルの「身体のいいなり」、ぴったりだなと思いますよ。
アトピーで何も受け付けなかったからメイクやオシャレを排除、しかし落ち着いて来れば(ヨガ効果か?)内なる女性の欲求が排除したはずのものを求め、メイクやオシャレを楽しめる身体にと、心と身体の密接した関係を思い知る。
女性の方が確かに強いだろうな。
私も学生時代は体調崩しても毛染めしてた(若白髪体質)が、病気後は切り捨てたなあ…。
著者にとっての「ヨガ」にあたるものに私は出会えていないのかもしれない…と少し寂しくもなる(笑)。
自分もかなり面倒臭い方だと思ってましたが、
真に面倒臭い考え方の持ち主の著者だからこそ向き合えたのだな、と妙に納得できる本でありました。
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COMMENT
No Title
体の声を聞くようにしてるのは私もそうです。私の場合は『胃腸の声』でしょうか、逆らって食べると痛い目に遭います。
白髪染めやらないとラクだよね〜。いまや自画自賛状態の私、まずいなー(苦笑)
Re:No Title
毛染めをやらないと楽ちんですけど、葛藤がなかったわけでもなく、
この本を読んだ今となってはまた復活してみたくなったりもしてます。
でも、 美容院自体をカット専門店にしている私には到底無理です…。
No Title
ところで私は本に埋もれて暮らすのはイヤです。だからばっさばっさ売り払って本棚一本分に絞ってしまったわけ。ホコリで人は死なないけれどストレスがたまるのでホコリのたまらないような部屋にしているのでした。
Re:No Title
表紙のイラストそのままのような感じでした。
闘病記にしてそれだけに非ず、そんな本です。
今後も内澤さんの厄介ぶりに注目していきたいと思います。