心を持たない殺し屋チャンスが、目を撃ち抜かれたことで病巣に変化が起き、40歳過ぎて幼少時依頼の心を取り戻す、そういうお話。
心を持たないというと「脳男」を思い浮かべるが、チャンスはクリューヴァー・ビューシー症候群という病気。
昏睡時に神様が現れ、チャンスを人間にしてくれる贈り物を授けてくれる。
それが心で、神様はあの人で、とつながるラストにやられます。
そこまでチャンスは、水、無糖紅茶、田神のつくったごはんを美味しいと感じ、心を持ったから幸せになれると期待を膨らませるが、普通の人ならしないようなことをして苦しみ、神様の仕打ちを痛く感じたところに、彼は神様なんかじゃないけれどやっぱり神様はいたんだな、とっくに自分の前に現れていたのだな、と心で直に受け止めたチャンスが嬉しかったよ…。
女性編集者、匿ってくれた田神、両親、もっともっと話は膨らんだかもしれないけれど物足りなさを残しつつも、チャンスの再出発が主役だと素直に受け止めたい。
著者の描く、世間的には犯罪者で半端者の真っ当さにやっぱりやられましたよ。
昔はそういうの苦手だったのですけども。
感想で「最後失速」とか「はっきりしなくて…」等というのを目にしましたが、私は想像をかきたてられてけっこう満足ですけど。
ヨモギダと市岡が兄弟だったことが、あの全部は語らないラストに効いてると思うのですよ。
あの涙を車中の男は見逃さないし、市岡が声をかけた連中からもそれとこれとはつながるし、車中の男たちは不快じゃないし。
ヨモギダの愛、それを感じられるようになったチャンス、それらがあるからこそでしょうに。
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