吉本隆明さんの本は挑戦したことはあるが、私には無理があったと思う。
しかし、たまたま手に取った「dancyu」で書かれていたものは「ふふふ」と面白かったので、本になったのを機会に読んでみた。
これがまた、なんと、吉本隆明の食いしん坊日記なのだ。
上等なものをちょこっと食べる人というイメージがあったので、塩せんべい、味の素、衣揚げ、グミといった言葉がたいへんに新鮮。
そんな中に登場する焼き蓮根、これは食べてみたい。
ひとつひとつに娘さんであるハルノ宵子さんが追想文を添えているのだが、焼き蓮根のところでは食べさせてあげたかった想いと、散らかることを嫌った想いとの交錯がリアルである。
私たちの知らない吉本さんの状況を加えてくれている追想文がとてもよくて、追想文を読んでからもう一度本文の方に戻るとまた違った感覚がある。
本に通して流れているのは、食べることや食べ物を思い返すことで吉本さんは幸せな時をもう一度体験しているような、そんな感じ。
そしてもう一冊。
こちらは亡くなった愛猫フランシス子への想いを語ったもの(カバー足跡 フランシス子・笑)。
湿っぽくはなく、看取ったことから自身の生と死を想い、親鸞やホトトギスへと想いを馳せるのが一見年寄り語りのように思えるが、「開店休業」でハルノ宵子さんが「フランシス子と父」で書かれているのを読むと納得というか、気持ちのおさまりがいい。
守り守られる対の関係の喪失、それがこの語り本の大テーマだったのだな、と。
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