ポアロ、ミス・マープルと、映像化されたものは見ているので、ノン・シリーズものもそろそろ触れてみようかなと手にしました(「そして誰もいなくなった」は読んだけど)。
別名義で書かれた、人殺しありきのミステリ小説ではないということで興味は高まりました。
読んでみたら予想を超えた引き寄せられ感でした。
ジョーンの回想で、子どもたちの様子や夫の言動が読んでいるこっちに知らされますが、「これで何とも思わないとか、ジョーン、あんた大丈夫か?」と思うことばかりでした。
お嬢様学校の純粋培養、恐るべしとも感じました。
が、ジョーンは本能で恐らく真実であろうことをわかっていながら、蓋を開けることなくしまいこんでしまっているのでした。
なんなら、蓋を開けないだけでなく、新たに鍵をつけるような勢いです。
もっとも、人生のすべてをお嬢様学校で学んだことの枠内に収めようとしているのですから、純粋培養恐るべし、で合っているのかもしれませんけど。
砂漠の出来事から、生まれ変わったジョーンを受け入れる夫というのも想像しましたけれど、そんな生易しい展開になるわけありませんね。
ジョーンはいつまでもジョーンその人で、夫ロドニーもロドニーなのでした。
ロドニー、いくら波風を立てるのがいやな性分だとしても、ジョーン本人を前に「望む仕事ができない男は男でない、身をもって知っている」とか言うんですよ。
本人目の前にしても、ジョーンは何も思うまいってわかってるんですよ。
そういうところから、この二人は夫婦になるべくしてなったと言えるのかもしれませんけれど。
思い遣りとは別の感情で成り立っているのですよ、この夫婦というか家庭は。
ひとりぼっちであることに気づきませんようにって、残酷すぎやしませんか。
でもその残酷さがスカダモア家の平穏なのですよ。
巻末の解説にもうならされました。
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